15 Jun 2011

ヒューマニティの再生

6月10日、スペイン・カタルーニャ自治州は人文科学分野で功績をあげた人物に贈るカタルーニャ国際賞を、村上春樹氏に授与しました。受賞スピーチにて村上氏は東日本大震災と福島第一原発事故に言及し、効率優先の政策が今回の過ちを引き起こしたと述べました。



彼は道路や建物と違って簡単に修復できないもの、即ち「倫理や規範」に触れ、効率や便宜といった考えが唯一の被爆国である日本を世界第3位の原子力依存国にまで押し上げたことを嘆きます。
そして、ヒューマニティの再生がわれわれ全員の仕事だと訴え、「夢を見ることを恐れてはいけない」としてスピーチは締めくくられています。

地震から3か月がたった今も、多くの人が困難な状況での生活を余儀なくされ、また国民全体が希望を失い鬱蒼とした雰囲気が漂っています。それは、国外にいても十分に感じます。

村上氏がスピーチの中で述べていたように、日本人は我慢を美徳とする文化を持ち、それが震災後の混乱を防いだことは海外のメディアでも称賛されました。確かにそれは日本人として誇りを持てる部分です。しかし、それにしてもこの非常事態の中政争に明け暮れる政府・官僚、また正確な情報を即座に公開しない東京電力(及びその背後で利益を享受している者たち)に対しては、声を上げるべきだと思います。
福島第一原発の影響により、ドイツでは25万人規模、スイスでも2万人規模の脱原発デモがありました。しかし、当の日本でこれまで起きたデモは最大でも1万5千人規模です。日本人として、日本の今後の在り方を真剣に考え、声を上げていくことが求められていると感じます。