27 May 2012

「売れるもマーケ 当たるもマーケ」

自然には法則がある。その法則に従わない限り、格好いい飛行機も優れた建築物も無用の長物となってしまう。

それと同様に、如何に立派なマーケティング計画を立てようとも、マーケティングの不変の法則を知らなければ、モノは売れない。

マーケティングに関わる22の基本的法則を纏めた本書では、市場での失敗・成功のパターンが米国の優良企業(IBM、コカコーラ等)の事例と共に解説されています。初版発売は1994年でありながら、今日現在でも非常に有効な指南書であると評されているそう。

以下、本書のポイントをいくつかピックアップします。
①一番手の法則:
自分が先頭を切れる分野を創造すること。なぜなら顧客の心に最初に入り込んだブランドが市場をリードし、その商品の総称になるから(ex. バンドエイド、サランラップ)
②カテゴリーの法則:
あるカテゴリーで一番手になれない場合は、一番手になれるあたらしいカテゴリーを作れ。考えるべきは、新製品が競合製品よりどこが優れているかではなく、「どのが新しいか」=「どのカテゴリーで一番手か」。
③心の法則:
市場への最初の参入は、顧客の心に最初に入るという限りにおいて有効。アイデアやコンセプトをいかに顧客の心の中に吹き込めるかが最重要となる。
④知覚の法則:
マーケティングは商品の良し悪しではなく、顧客の心の中にある知覚に依存する。知覚こそ現実であり、他のものは全て幻である。私たちは信じたいと思うものしか信じないのである。
⑤集中の法則:
マーケティングにおける最も強力なコンセプトは見込客の心の中にただ一つの言葉を植えつけること。例えばFedexは「翌日配送」、ハインツは「どろりとしたケチャップ」。
⑥独占の法則:
二つの会社が顧客の心の中に同じ言葉を植えつけることはできない。
⑦梯子の法則
顧客の心の中には商品のカテゴリーごとに梯子が存在する。採用すべき戦略は、自分が梯子のどの段にいるかによって決まる。
⑨対立の法則:
ナンバーツーの座を狙う時の戦略は、ナンバーワンの在り方に依存する。即ち、ナンバーワンのエッセンスを見出し、それと反対のものを顧客に提供すること。
⑪遠近関係の法則:
長期的なマーケティングの効果は、短期的な効果の正反対であることが多い。(ex.バーゲンセール)
犠牲の法則:
何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない。例えばペプシはコカコーラに対抗するため、ティーンエイジ市場以外を犠牲にした。(しかし実際は29歳に見られたい50歳の男性もペプシを買うようになった)
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現在私は直接的にマーケティングを担当しているわけではありませんが、これらマーケの法則は実際にモノを売る立場にない人であっても、ビジネス上の交渉就職活動や対人関係におけるセルフ・ブランディングの際にも応用がきくかと思います。
その意味でも、とても勉強になる一冊でした。

26 May 2012

life

“Tell me, what is it you plan to do
with your one wild and precious life?”    ― Mary Oliver

            

22 May 2012

技術を使って世界を変える

Kopernikという団体をご存知でしょうか?

2010年、中村俊裕さんという方が国連在職中に設立した、途上国に暮らす最貧層の人々の生活改善に向け現地に根差したテクノロジーを届けることを目的としたNPO団体です。

中村氏は、国連スタッフ及びマッキンゼーでの経験から従来の途上国支援に不足してる「最貧層への直接のインパクト」及び「革新的解決策」を追及し、Kopernikを設立。(中村氏の経歴はこちらに詳しいです)

彼のTED動画からも、いかに情熱と冷静さを兼ね備えた方であるかが分かるかと思います。

 
Kopernikの特徴は、「技術を持つ企業や大学」「寄付を行う出資者」「現地コーディネーター(NGO等)」をオンライン上でマッチングさせ、途上国のニーズに基づいたシンプルな製品やサービスを届けるというビジネスモデル。

公開されている年次報告書によると、2011年は23件のプロジェクトにより9か国43,000人の支援を達成。

Diamond Onlineのコラムにて中村氏が述べているように、途上国の最貧層と言われる人々が直面する主要な課題は①現金がない、②電気がない、③安全な水がない、④トイレがなく衛生状態が悪い、⑤調理の際の燃料効率が低い、⑥農業の生産性が低いの6点。

これらを解消するために届けられた技術の例としては、ソーラー補聴器、助産婦キット、クリーンな調理用コンロ等々、こちらから一覧が確認できます。

学生時代にケニアの農村で暮らした身としては、こちらのQドラムなんて本当に画期的だと思います。水道のない地域で毎日生活用水を川から運んでくるのは本当にキツい仕事。
小さい女の子でも頭にバケツを乗せて毎日水源まで何往復もし、学校に通う時間を奪われていることも多いです。
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貧困層を対象とした所謂BOPビジネスは今や一種の流行のようになっていますが、知られているものの多くが欧米のビジネススクールでケーススタディとして取り扱われているような大企業による成功例かと思います。(例えばグラミンダノンユニリーバの取組など)

その一過性の華々しさとは裏腹に、実態としては企業側で価格や技術の適合性を取れなかったり、また途上国相手に必要となる柔軟な対応ができずに、BOPビジネスに失敗した例は枚挙に暇がないのでしょう。

しかし、中村氏がこちらで述べているように、現地の制約条件に合わせ高い創造性とロースペックさを備えた製品を開発することは、本来モノづくりを得意としてきた日本企業にとって大きなチャンスとなり得ます。
ただ、日本企業に欠けているのは現地の状況を実際に自分達の目で見て実感すること。

そのためには、これまでの保守性を捨て、どんどん現地に足を運び、現地の人々と交流する中で彼らのニーズに併せたサービスを開発していくことが求められているのだと思います。

21 May 2012

トルコと不法移民

トルコの大衆紙Today's ZAMANによると、これまで欧州への不法移民の経由地であったトルコが、彼らの最終目的地になりつつあるとのこと。



トルコ当局にて纏められたレポートによると
・2009年約27,000人であった不法移民の検挙件数は2011年には35,000人以上に増加
・約80%は男性で大半は19~25歳。
・4人に1人は読み書きができず、多くは現在建設業に従事。
・移住理由の70%以上は生活の糧を得るため、他には戦争、政治的理由など
・85%以上の不法移民が人身売買組織の助けを得て不法入国している
・2001~2010年、人身売買により検挙された9,000人以上がトルコ出身であり、その他にイラク、イラン、パキスタン、アフガニスタンが続く
・2011年、人身売買を通じて発生した利益は3億ドル以上

記事にて指摘されているように、不法移民は人道的・経済的問題を喚起するだけでなく、トルコのEU加盟交渉にも影響を与えかねません。欧米と中東の橋渡し役としてリーダーシップを獲得したいトルコ政府が今後どのような対応を取るかが注目されています。

19 May 2012

Twitterの使いかた

5月15日付日経新聞に掲載されていたTwitter Japan代表、近藤正晃ジェームス氏による働く女性向け・Twitterの活用方法。参考になる内容が多かったため、備忘録代わりに載せておきます。
尚、近藤氏は慶應→マッキンゼー→ハーバードMBAで、Table for Twoの共同代表も歴任するなど、マルチタスクな方です。

①「どんな自分になりたいか」を常に考えて情報を選ぶこと
 現在、TwitterのActive Userは1億4000万人、1日のツイート数は3 億4000万件に達するそう。この中には自分がなりたいと思う人が必ずいるはずで、彼・彼女らをフォローすることで「なりたい自分」のイメージがしやすくなるとのこと。
②ためになったツイート、面白かったツイートに返信してみること
 Twitterの良い点は世界中の人とリアルタイムで情報交換ができること。これを活用し、自らメッセージを発し、対話の中で思考を磨くことが重要。
③自分の「いま」を発信すること
 他の誰にも真似できない新鮮でリアリティ溢れる自分の「いま」を、メッセージとして発することがTwitterの醍醐味の一つ。
④重要だと思う情報に毎日接し続けること
 以前のポストでも書いた様に、思考は人間の行動や性格の根幹を為すもの。この思考の在り方は、どのような情報に日々接しているかにより決まるため、自分にとって意義がある思える情報に意識的に触れることが大切。
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私の場合、FacebookはFace to Faceの付き合いがある友達との交流、Twitterは自分と同じ興味(途上国開発、海外移住、ダンス、映画、音楽、芸術etcなんでも)を持つ人々が日々どのようなことを考え、行動を起こしているのかの情報収集、と使用目的を分けています。
なので、Twitterでは基本的に真面目なことばっかり発信していますが、Twitter経由でお会いしたことない人から連絡を頂いたりもするので、やはり自ら発信していくことは重要なんだなぁと感じる今日この頃です。

12 May 2012

Free Travel

トルコに来て一番の収穫は、色んな国の友人・仕事仲間ができたこと。特に、中東やアフリカ出身の人々とは日本で知り合う機会が少ないので、彼らとの交流の中で互いの文化を学び合えるのはとても嬉しいです。

そこで改めて感じるのが、日本人というだけでどれだけのメリットを享受しているかということ。日本人が多くの国で勤勉・真面目・礼儀正しいという印象を持たれているという事実は素晴らしいことだと思います。逆に言えば、ある国の出身というだけで貧困やテロなどネガティブなイメージを持たれてしまう人々がいるということも事実です。
例えば、トルコにおいても日本はrespectすべき国との印象があり、日本人というだけでかなりの好印象を持たれます。最近は韓国人の印象も良いみたいですが、中国人については粗悪品などのイメージが強く、中国に対してはあまり良い感情を持っていないよう。

日本人であることのメリットを一番実感するのがおそらく海外旅行でしょう。イスタンブールからは今のところ英国、ギリシャ、ドバイ、チェコ、オーストリアに出向きましたが、全ての国において短期の滞在であればVISAは不要です。しかし、シリアやイラク出身の友人によると、彼らにとってはどこに行くにもVISAのApplicationが煩雑で時間もかかり、場合によっては取得できないこともあるそう。

The Economistの統計によると、VISAなしの海外旅行ができる国ランキングでは日本はスウェーデン、フィンランド、デンマーク、ドイツに続き第5位となっています。223の国・地域中、170近くの行先がVISAの心配をすることなく選択できるというのは、本当に、凄いことだと思います。



こちらのコラムでちきりん氏が日本に生まれたことの幸運さを述べている通り、「自分がとても恵まれた立場にいる」ということを認識することは重要だと改めて実感しました。

6 May 2012

他人の目を気にしてはいけない9つの理由

友人に教えてもらった、Dana Saviucという女性によるPurpose FairyというBlog。
誰しも苦難や悲しみに遭遇しネガティブな状況に陥ることはあるけれど、それらを乗り越え人生を豊かに生きるための素敵な言葉が綴られているBlogです。


印象に残ったポストがあったので、日本語訳と共に備忘録まで◎


9 Reasons Why You Should No Longer Care About People's Approval
(他人の目を気にしてはいけない9つの理由)

1.You Simply Can't Be Liked by Everybody
  誰からも好かれるなんてまず不可能
2.You Can Live a Happy Life Without “Their”Approval
  “彼ら”から認められなくったって幸せな人生は歩める
3.You Can't Control What Other People Think of You
  他人が自分のことをどう思ってるかなんてコントロールできない
4.Approval Seeking Behavior is Time Consuming
  支持を求める行動なんて時間のムダ!
5.Approval Seeking Behavior Drains Your Energy
  支持を求める行動は単なるエネルギーの消耗!
6.Freedom to Be Who You Want to Be
  なりたい自分になる自由がある
7.Inner Peace
  他人を気にしなくなった時、心の平穏が訪れる
8.You Are The One In Control of Your Life, Not Them!
    自分の人生をコントロールできるのは、他の誰でもなく自分だけ!
9. The ONLY Person You Must Get Approval From Is YOU!
  だから、自分が承認を得るべきは自分自身なのである。


最後に、心に残った言葉を。
“Care about people’s approval and you will be their prisoner”  ―Lao Tzu
“他人の賛同を気にした瞬間に、あなたは彼らの囚人になってしまう”―老子

5 May 2012

「Biutiful」

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、ハビエル・バルデム主演の「Biutiful」を鑑賞。
同監督はアモーレス・ペロス、21グラム、バベル等でも有名。
ハビエルはスペインを代表する男優で、ペネロペ・クルスの旦那さん。彼の作品は実在の全身不随の男性を描いた「海を飛ぶ夢」が一番だったけれど、本作でも本当に力強く、濃い演技をしていた。



ストーリーの主軸は、末期がんを宣告された男が子供たちとの時間を過ごすというもの。一見在り来たりになりそうなこの内容に、男の商売やそれに関わる人々(中国人移民による偽商品製造、アフリカ人移民による違法販売などなど)の生き様が生々しく描かれている。

そしてこの違法商売は実際に世界各地で起きている問題であり、その裏側にある一人一人の人生を想像すると本当に心が痛くなった。

根底にあるのはやはり貧困や失業であり、彼らの違法行為を追及する前にその根本を断ち切るような支援が必要になるのだと強く実感させられた映画でした。

1 May 2012

「アイデアのつくり方」

なにげなくアマゾンで見つけた「アイデアのつくり方」
著者は米国最大の広告会社、トンプソン社の最高顧問を務めた
ジェームス.W.ヤング。


アイデアをいかにひねり出すかという課題は、広告に携わる者だけでなく全ての企業人に突きつけられる課題だと思う。例えばiPhoneひとつをとってもジョブズ一人の発明(=アイデア力)だけでなく、製造・販売・宣伝のすべての過程において多数の人々のアイデアが混ざり合った結果、成功を収めたのだと思う。そう考えると、どのようにして良いアイデアは私たちの頭に舞い降りてくるのかは誰もが知りたがるところだろう。


それをたったの60ページ(日本語版)で解説してくれているのが本書。
著者が提唱する方法はいたってシンプル。
まずはアイデア作成の基礎をなす下記2つの原則を知ること。
①アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということ
②既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存するところが大きいということ
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ところで、①の“新しい組み合わせ”という言葉を見て、日本総合研究所でBOP市場の研究を行う槌屋さんのブログにある次の文章を思い出した。
“多くのBOP向けに利用されている技術が・・・新しい組み合わせを作り出すことで再利用され、再加工され、新しい価値を生み出している。・・・組み合わせを刷新するために求められたものは、二つのかけ算項目の間を調整する力であり、一つではなく複数で作り上げる過程である。つまり、新しい組み合わせを作り出すために必要なプロセス、がイノベーティブであり、人を活性化させるのだ。”
BOPという新しい分野のビジネスにとっては、益々物事を効果的に関連づける力は重要になるのだろう。
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次に、著者は実際にアイデアを生産する5つの段階を紹介。
  1. 資料を収集(一般的資料+特殊的資料)
  2. 資料を咀嚼
  3. 問題を完全に放棄し、自分の想像力や感情を刺激することをやる
  4. ユーレカ(発見した!)の瞬間
  5. アイデアを具体・実践化

一見複雑なアイデア作りという作業をここまで単純明快に説明しているのは本当にすごい。このシンプルな法則をいかに心に留め、咀嚼し、日々の作業に適用していけるかが重要なのだと思う。