「あの人が私を愛してから、 自分が自分にとってどれほど価値のあるものになったことだろう。」
ドイツの詩人・小説家・哲学者・法律家であるゲーテが25歳の時に著した「若きウェルテルの悩み」。
本作では、婚約者のいる女性・ロッテに恋をした青年ウェルテルが、その叶わぬ想いに苦しみ、果てには自殺を図るまでの経過が彼女への手紙の形で綴られています。
ゲーテの実体験に基づいているという点が本作のポイント。
彼は23歳の時であったシャルロッテ(当時19歳)に魅了され、恋に落ちます。しかし、彼女には婚約者がおり恋愛関係を結ぶことを拒まれ、結局彼女は別れも告げずゲーテの元を去ってしまいます。
失意に沈むゲーテは、彼女の結婚が近づくにつれ自殺も考えるように。そんな時、ゲーテの友人エルーザレムが人妻に恋して容れられず、絶望して自殺したとの知らせにゲーテは大きな衝撃を受けます。
この友人が自殺する前後の様子を文書にし、自身の失恋体験と合わせ本作の構想が得られたとのこと。着想からわずか4週間で執筆されたというのだから驚きです。
恋に落ちた者なら誰しも分かるであろう片想いの苦しみ。
それが全編に散りばめられた美しい文章で表現され、読者に魅惑的な印象を与えています。
以下、いくつか本編からの抜粋を。
以下、いくつか本編からの抜粋を。
「なぜたよりをしないかって?…察しがつかないのかなあ、私は無事で、しかも―。簡単にいうと、私には一人の知合いができた。それが私の心をすっかり占めている」(6月16日)
「たしかに、私は感ずる。…ロッテは私を愛している!…あのひとが私を愛してから、自分が自分にとってどれほど価値あるものとなったことだろう」(7月13日)
「もし恋なかりせば、この世はわれらの心にとってなんであろうか?」(7月18日)
「愛するロッテよ、この一室にいて、あなたに手紙を書かずにはいられなくなりました。…この部屋に足を踏みいれるやいなや、あなたの姿、あなたの思い出が、私に襲いかかってきました。おお、ロッテ!きよらかに、あたたかく!ああ、あの最初の幸福な瞬間がふたたびよみがえってまいりました」(1月20日)
「きまりました、ロッテ、私は死にます」(12月21日)
「弾はこめてあります。―12時が鳴っています!では!ロッテ、ロッテ!さようなら!さようなら!」(12月22日)
尚、本作に基づいた映画も製作されております。評判のほどは分かりませんが。。