20 Jan 2013

「金融腐蝕列島」

紹介するまでもない、著名なビジネス小説作家、高杉良氏による経済小説シリーズ。

経済小説モノでは黒木亮氏の方が自分の経歴に重なる部分があったけれど(中東向けプロジェクトファイナンス、総合商社勤務など)、高杉氏の小説は初めて。

この金融腐蝕列島シリーズは1997年の初版からシリーズ化、映画化もされてる濃厚な金融小説。バブル崩壊後1990年代からの日本の銀行・証券業界の裏側を描いたリアリティ溢れる内容です。

まだ80%しか読み終わってないけれど、特に前半の銀行会長の娘が不倫スキャンダルの画策や、総会屋対策の様子、裏工作などは惹き込まれます。実際にこういうことが行われていたのだと思うと末恐ろしい。。

 

13 Jan 2013

「わたしの名は紅」

少し前に読んだ本ですが、トルコ人として初めてノーベル文学賞を受賞した作家、オルハン・パムクによる「わたしの名は紅」。(新約版は「赤」ですが「紅」の方がしっくりくる感じ)
2000年に発表された本作は世界24か国語に翻訳され、数々の賞も受賞しています。パムク氏は現在米コロンビア大学比較文学論教授。

舞台は1591年冬、ムラト3世治世下のオスマン帝国。
皇帝の命により秘密裏に写本の制作を引き受けた「おじ上」は、細密画工房の名人絵師4名に作業を依頼。その中の一人、「優美」と呼ばれる細密画師が殺されたことにより、残る3名に殺害の疑いがかかる。

物語は各章「わたしは○○」という形で一人称で語られ、犯人捜しをめぐるミステリー小説…と思いきや、物語には「おじ上」に呼び戻され12年振りにイスタンブールに戻ったカラという好青年と「おじ上」の娘シュキュレとの複雑な恋愛模様が交錯して描かれる。

物語の語り手はカラやシュキュレ、細密画師、だけでなく、犯人、死者、馬、金貨、そして赤と、ころころ変わる。その過程で細かくそして鮮やかに描かれる各人物の心理描写、そしてオスマン時代の美意識、文化・歴史・宗教的世界観。本当に自分がオスマン帝国時代にタイムスリップしたような不思議な感覚に囚われる小説です。

彼は自身のワークスタイルについて下の動画で述べています。(ところで、(失礼ながら)トルコ人でここまで英語が上手い人はあまり多くないです。ビックリしました。日本の文化人でスラスラ自身の仕事について英語で発信できる人がどのくらいいるのだろう?)




"I am just listening to an inner music, the mystery of which I don't completely know. And I don't want to know."

そんな簡単に、こんな素敵な小説を生み出せるなんて…天賦の才としか言えません。。
(ちなみにまだ読んでないですが、その他にもたーくさん代表作があります)

5 Jan 2013

「やらないこと」を決めた

去年は漠然とではあるけれど年初の目標を立てました(New Year's Resolution)

達成率は

1. 仕事:新たな路を拓く。:90%
新たな路への布石は打てた。

2. 内面:常に心を落ち着け、平静を保てるように:50%
やっぱりまだまだ精神面は弱い。海外生活のせいもあり色々ストレスを感じることも多かった。

3. 外面:引き続きジム通い。:65%
ジムは行かずとも毎日のストレッチは続けた。ただ体調を崩すことも多かったのでやや未達成。

4. 教養:良質な読書と芸術に触れる:50%
英語の勉強やら仕事やらで、実務に関係ない本をじっくり読めなかった。

で、肝心の今年は、こちらの記事を参考にやらないことを目標に立てたいと思います。
なぜなら人生では時として「何を望んでいるか」よりも「何を望んでいないか」を明確にした方がうまくいくことがあると思うから。(というか、人間の性としてその方が考えやすいのかもしれない。良くも悪くも。一番悲しいのはそのどちらについても真剣に考える機会がなく、ただただ周りに流されて漠然と生きていくこと…)

そのリストはこちら。じっくり考えてみると結構難しいです。


1.今年はどの構想・プロジェクト・活動をやらないことにしますか?
 (What strategies, initiatives and activities will you say “no” to?)
→できれば制限したくない。むしろ多様な活動に参加し自分の志向を見極めたい。敢えてあげるなら自分が既に経験し繰り返しとなるもの。

2.今年はどの指標をチェック対象外にしますか?
 (What measurements will you ignore?)
→自分が信頼・尊敬しない人からの評価、体重計(笑)

3.今年はどんな顧客を相手にしないことにしますか?
 (What customers will you not target?)
→一緒に働いていて刺激がなく、互いに成長が感じられない相手

4.今年はどんな人とつきあわないことにしますか?
 (What people will you not keep?)
→人種・国籍・社会的地位など内面以外の部分で一面的に人を判断する人

5.今年はどんなライバルと競わないことにしますか?
 (What competitors will you not follow?)
→そもそもあまり人と競うのが好きじゃない…敢えてあげるなら自分と違う分野で卓越している人?

6.今年はウェブサイト(ブログ)から何を取り除きますか?
 (What will you remove from your web site?)
→表面的な情報しか載せていないニュースサイトや個人ブログ

7.今年は何にお金を使わないようにしますか?
 (What money will you not spend?)
→お酒…

8.今年はどんな集まりに参加しないようにしますか?
 (What meetings will you decline?)
→次の日に重大な影響を与えるオールの飲み会…

9.今年はどんな旅行を避けるようにしますか?
 (What trips will you not make?)
→家族を心配させる途上国への旅行

10.今年はどんな(プレゼンテーション)スライドを作らないようにしますか?
 (What slides will you not create?)
→スライドは作らない。もし作るなら情報の受け手を1秒でも退屈にさせないように努力する

11.今年は何を言わないようにしますか?
 (What will you not say?)
→他国の人を不快にさせる恐れのあること(特に日本との比較で)

12.今年はどんなことを考えないようにしますか?
 (What thoughts will you not entertain?)
→ネガティブな妄想(被害妄想?)

今年も実りある一年にすべく、まずは抱負まで。

28 Dec 2012

差異と差別


こんなニュースがあった。

「アジア人になろう」顔写真加工アプリ、アジア系米国人が反発

記事によると・・・
目を細くしてナマズひげを生やし、円錐(えんすい)形の麦わら帽子をかぶればあなたもアジア人――。そんな顔写真加工アプリが米グーグルのアプリ配信サイトに投稿され、アジア系米国人の反発を招いている。
問題のアプリ「Make Me Asian(アジア人になろう)」は、「たった数秒で中国人、日本人、韓国人、それにどんなアジア人にもなれる」というのがうたい文句。ほかに肌の色を濃くしてペインティングし、羽飾りを付けて「アメリカ先住民になれる」というバージョンもある。
ただのおふざけなんだろうけれど、人によってはあまり良い気がしないでしょう。

よく、非アジア人が目を横に引っ張って細くし、アジア人のジェスチャーをして「Racist!」と怒りを買う場面がある。
もちろん、相手側に見下す意図があればそれは許されるべきではない。でも人種や民族の差異・特徴を表現することが、必ずしも人種差別につながるとは思わない。

例えば、トルコに来てからアジア人の特徴(特に切れ長の細い目)について言及されることが多い。でも、多くの場合相手は好意的な意味で使っている。細い目の可愛い赤ちゃんが欲しい、など。

そういう好意的な物言いに対して侮辱と感じる人の反応の裏には、その特徴に対して自分が自信を持っていない、もしくはそれが劣っていると考えているということがあるのかな、と思う。

一般的には「目がパッチリしている」「背が高い、足が長い」などがキレイもしくはかっこいいの特徴
だけれど、皆が皆そう感じるわけではないし、自分の外見的特徴に誇りを持っていれば、相手がどんな言い方をしてこようと気にならないわけで。
(まぁそういう自信を持つことは難しいとは分かっているけれど。)

違う例として「けつあご」がある。(正式名称は割れ顎らしい)

外国人の男優さんに多いこの特徴、海外では渋い男の象徴(?)として、顎を割る手術もあるらしい。ちなみにWikipediaによると「割れ顎がドラマチックな雰囲気を演出している」そう。笑
でも日本ではこの特徴は笑いのネタにされたり、これをコンプレックスに感じ、治療のための美容整形もある。

要は、自分が他人との差異をいかにポジティブな特徴として捉えるか、なのだと思う。

補足:
日本人や東洋人の場合、歴史的に草食だったため、一般的に『咀嚼筋』の発達が不十分であることから、けつあごになりにくいらしい。ただ、日本人も食事が欧米化し、肉を多く食べるようになったことで、体形が欧米化してきていることと同様に、咀嚼筋が発達し、けつあご化することもあるよう。

女性の場合は皮下脂肪が多いため、皮下脂肪でカバーされてけつあごが目立たないらしいけれど、間違ったダイエットや痩せすぎなどで女性ホルモンが減りすぎてしまうと、ホルモンのバランスが崩れてしまい、男性化が進んでけつあご化してくる可能性もあるらしいです。


そもそもけつあごって名称もよくないけれど!笑

15 Dec 2012

「人間失格」

恥の多い生涯を送って来ました。

言わずと知れた太宰治の名著「人間失格」。太宰自身の生き様を色濃く反映したと言われている本書は上の書き出しから始まる。

主人公、大庭葉蔵は周囲の前ではおどけた顔を見せ、本当の自分を誰にもさらけ出す事の出来ない男。自分を偽り、他人を欺き、過ちを犯し、ついには「人間、失格」の判定を自らに下す。

太宰がこのような人生を歩み最後は入水自殺を図ったこと、それよりもこの小説が1948年の発行後未だに名著として受け継がれ、映画化までされていることが凄いと思う。

即ち、この暗澹とした小説に深い共感や衝撃を受ける読者がそれだけ多いということ。

人間誰しも内面には闇の部分を抱えていると思う。それを普段表出することができないから、このような小説に救いを求めるのかもしれない。

30 Nov 2012

もしも生まれる場所を選べるなら?

日本のパスポートは最強、というのはよく聞く話。(正確にはこちらに書いた通り、世界第5位)

では、どこの国に生まれたら一番幸せなんだろう?
そんな調査がThe EconomistのThe lottery of life(人生を決めるルーレット)という記事に載ってました。

130か国における「人生の満足度」を比較するため、11の指標―GDP、生活コスト、平均寿命、教育などによって評価。Yawn Index、即ち、その国がどれだけ退屈かという面白い指標もありました。

で、その調査結果が以下。

北欧圏やシンガポール、香港の住みやすさはよく話題になるので納得できる。でも日本が予想以上に低い…!
ちなみに1988年に行われた同様の調査だと、米国が1位で日本は5位。生活コストや経済界のリーダーの不足(この指標が必要かは疑問だけれど)が特に足を引っ張っていたよう。

今回の調査における、各指標の詳細ポイントは公表されていなかったけれど、日本がなぜこんなに低いのか、ちょっと残念です。

10 Nov 2012

「置かれた場所で咲きなさい」

たまたま会社の先輩から送られてきた一冊。
他人に薦められなければ多分手に取ってなかったでしょう。最近「○○しなさい」というタイトルの本が多すぎてかなり食傷気味だったので…(おそらくその方が注目を浴びるという出版社側の意図なんでしょうが、これは日本人が全般的に誰かに指示されたいという願望を表しているのだろうか・・・)

著者は渡辺和子さんという、ノートルダム清心学園の理事長を務める方。修道者としてアメリカで修練を受け、30代半ばという若さでノートルダム清心女子大学の学長に就任したとのこと。

その多彩な経験を基に、人生において非常に重要な教訓を、とても柔らかい口調で語りかけてくれるのが本書。どんな世代にもお勧めできる1冊です。
以下、心に残ったフレーズをいくつか。

・神は力に合わる試練を与えない。
→どんなに現実でも、それが変わらないのなら悩みに対する心の持ちようを変えてみる。

・きれいさはお金で買えるが、心の美しさは変えない。
→神聖な心は自分との闘いによってのみ得られる。

・苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。
→生きようとする覚悟、そして笑顔は人に力と勇気を与えてくれる。

・順風満帆な人生などない。
→思わぬ不幸や失敗から本当に大事なことに気付くことができる。

・自分のいのちに意味を与える。
→家族、友人、他者への愛は生きる原動力。

・一生の終わりに残る物は、我々が集めたものではなく、我々が与えたものだ。
→謙虚になることが成熟の証。

・老いは人間をより個性的にするチャンス。
→人間関係を「量から質」に変え、自分を豊かに。「老い」を意識するとき、人はより柔和で謙虚になれる。